衛錦雲がこの世界に目を覚ました時、本来の彼女が息を引き取ってから、まだ半刻も経っていなかった。
周りには白い布が掛けられ、家には年老いた祖母と幼い二人の妹が残されているだけ。叔父や伯父たちの親戚は涙もろく装って几声か泣きわめいたかと思うと、すぐに顔を真っ赤にして、彼女の家の古い瓦屋根の家の分配について議論を始めた。
祖母には嫁入り道具としてもらった瓦屋根の家が一軒あり、川沿いに建ち、平江府の町中に位置していた。ここは人でごった返し、繁華で、賑やかな場所である。
これほど良い立地条件を、どうして簡単に譲り渡せようか。
衛錦雲は親戚を追い出し、南下して平江府へ向かい、戸を掃き、旧業を再開した。
ある朝早く、パチパチと鳴り響く爆竹の音が絶え間なく聞こえてきた。
呉の地の人々は、蜘蛛の巣だらけだったあの古い瓦屋根の家が開店したことに気づいた。
衛家の娘はすらりと立って、袖をまくり上げ、看板を掛けた。その看板には力強い筆致で「雲来香」と書かれている。
定勝糕、春水生、雲片糕、笑靥儿……。
菓子は台の上に置かれ、ドライフルーツが散りばめられていたり、花の形をしていたり、さらに雪のように白い団子は玉の珠のように丸くつややかだった。
呉の地の人は甘い物が好きだ。
結婚や祝寿、親戚や友人を訪ねる時、お茶を飲みながら芝居を聞く時も、菓子は欠かせない。
そして衛家の娘の店の菓子は甘くて柔らかく、脂の芳醇な香りがする。
食べてその妙味を称賛しない者などいない。
呉の地の民衆は機織りを生業とし、漁業を営む。魚と米を食べ、飢えに苦しむことはない。
一つには知州が清廉な役人であることに頼り、二つには巡検使の陸嵐が盗賊を捕らえ、凶悪犯を取り締まっているからだ。
陸巡検は厳正で私心がなく、正義を守り曲げない。夜回りが巡検司の前を通りかかると、中からは続けざまに悲鳴が聞こえ、鬼の泣き声のようだという噂だ。
事件を調査している時、陸嵐は偶然ある菓子屋の前を通りかかった。甘い香りが辺りに漂っている。彼は甘い物好きで、店に足を踏み入れた。
その一歩が、自分自身をも縛り上げることになってしまうとは。
人々は首を伸ばして覗き込み、そばにいる他人にささやいた。
「お化けでも見たか!今朝、陸大人が衛家の娘の店で、拳を振り上げて団子の生地を叩いているのを見たぞ!」
無涯道人は山を下りて弟子の様子を見に来ると、髭を震わせて目を怒らせた。
「不届きな弟子よ!お前にこの刀法を教えたのは、菓子に彫刻をするためではない!」
牢獄から出所した囚人たちは、その後は細心の注意を払うようになった。
「恐ろしい!あの人は尋問しながら、笑って酥餅を食べていた!兄弟の一言を聞け、これからは必ず法を守れ!」
しかし、人々が口にする陸嵐は、今、手に半分の菓子を持って、優しくささやいている。
「阿雲、私はもう半月も砂糖粉を篩い分けし、定勝糕の模様も描き終えた。私に籍を入れてくれませんか?」