正月も明けぬうちに、小さな町で大きな事件が起こった
明家の呉服屋の一人娘、明月(めいげつ)が、忽然と消えたのだ。
「あの博打好きの父親に売られたに違いない」
「継母に害されたのよ」
「耐えきれずに、自分で逃げ出したんだ」
噂が飛び交う中、「失踪」した明月は、大きな青騾(あおらば)に乗って一路南下していた。
彼女の目的は、絹の商いをすること。
金を稼ぐこと。
でっかい金を!
明月は、かつては枕すら満足に買えないほど貧しく、一銭すら二つに割って使うような生活をしていた。
やがては一面の商売を掌握し、江南で生産される絹織物の実に三割が彼女の手を経由するまでにのし上がった。
人々に取り囲まれ、足を向ければ必ず笑顔で迎えられ、会う人皆が友と言える日もあった。
しかし、頂点を極めた彼女は足元をすくわれ、策にはめられて全てを失い、破産寸前にまで追い込まれたことも……。
それでもなお、彼女は無一物から這い上がり、ついに天下に並ぶものなき大富豪となった。
人々は彼女をこう呼んだ—— 「明ハーフシティ(町の半分は明のもの)」 と。
女主(ヒロイン)はやり手だ。自分にも他人にも、とことん非情になれる女。
優れた女性は必然的に、多くの優れた男性を引き寄せる。たった一人の男に縄張りを限定されるなんて、ありえない。絶対にありえない。