辛柚(しん・ゆ)は、生まれつき左右で色の異なる瞳を持つ。
その目で、時折――他人に降りかかる“不運な未来”が見えてしまう。厄介だが、同時に彼女の切り札でもあった。
京城の少卿府。
寄食の身である表姑娘の辛柚は、これまで慎ましく、目立たず、生きてきた。だがある日を境に、周囲は気づき始める。
――あの娘、以前と違う。
不利な話には乗らず、危ない縁は一歩引き、他人が転ぶ未来を、静かに避けていく。
もう、黙って搾取されるつもりはない。
金枝玉葉の世界から身を引く覚悟もできている。
不運が見える娘が選んだのは、運に縋らず、自分で道を切り開くこと。
これは、“知っている者”が、運命と手を切る物語。