十二歳までの孟半煙は、家庭円満で幸せな日々を送っていた。
裕福とは言えぬ家柄でも、食べる物に困ったことは一度もなく、これといって願い事もなく、ただ毎日を楽しく過ごし、食べては寝て……誰よりも心安らかな日々だった。
十二歳を境に、彼女の世界は崩れ落ちた。父が行方知れずとなり、遺体すら見つからない。
一人娘である孟半煙は、歯を食いしばって孟家の体面を守らねばならなかった。
それ以来、彼女は自分自身のため、「願い事リスト」を作り上げた。
一、喪が明けた母を、良い相手に再婚させる。決して未亡人のまま終わらせない。
二、祖父と祖母を、恥ずかしくない形で看取り、世間から孟家を笑われないようにする。
三、役所で「女戸」を立て、髻を結い、自ら家を守って生きていく。
しかし、そのリストの項目を一つずつ達成しつつあったまさにその時、死んだはずの父が八年ぶりに帰ってきた。
父は都で名の知られた「婿養子」となり、侯爵家に嫁ぎ、子までもうけ、しかも自分(半煙)の縁談さえ決めてきていた。
リストは、無意味な紙切れと化した。
【男主視点】
戸部侍郎家の唯一の嫡子として生まれた武承安は、生来病弱だった。
「戸部の金庫番」とあだ名される父の莫大な財産を狙う、多くの庶弟や庶妹たち。
母がこの病弱な自分を無事に育て上げるだけでも、どれほど気苦労が絶えなかったことか。
文武両道に秀で、家業を守れるようなり振りなど、この病躯では到底望むべくもない。
そこで、選んだ道は一つ。――とにかく「非常に有能で強い、十人相手でも引けを取らない」と評判の妻を娶ることだった。