「それによるとなんですけど」と黒木小夜子が言った。「この世の中には、赤い糸で結ばれた運命の人が一人とそれからそれに準ずる人が三人いるんだとか…」
なるほど、と嵐山菊野は身を乗り出した。それからぶつぶつと独り言のように続けた。「住む世界も全然違う、日常的に何の接点もない、話もしたこともない、そういう男に夢中になっちゃたりするのも、ひょっとして赤い糸のなせる技かも…。広い世の中には、一瞬の出会いで、お互いに惹かれあってしまった、と言うような話も聞くし…」
「この世界は目に見える世界と、見えない世界から成り立ってるんだそうです」と小夜子は話を続けた。「その見えない世界では、人間はもともと、一番愛し合うのにふさわしい、深く結び合える相手を持っててね、人類の深層無意識というものも、最もふさわしい相手と結ばれることを、人類の未来のために、強く望んでるんだそうです。ただこの世に生まれる時に、見えない世界の定めによって、二人は別々の時と場所に生まれてくるらしい」
文字数 5539 肩の凝らない、気晴らしショート作品です。