臆病で、誰とも争わない、争えない男がいた。そんな自分を変えるため、彼はすべてを捨てて単身アメリカへ渡る。そして帰国したある日、激しい雷雨の雨宿りの軒先で、一匹の不思議な仔猫と、若く美しい女性に出逢う。
彼女は雨が上がると広い道の向こうへと消えてゆく。男は赤になってしまった信号機の下に立ち、連れ戻しても連れ戻しても執拗に付いてくる仔猫を抱きかかえ、「彼女は、どこに帰ってゆくのだろう」と、美しい女性の余韻だけが、静かに、胸の奥へと残った。
後日、彼は極限状況に追い込まれた女性を救い出す。気がつけば、それは、あの雨の日に出会った彼女だった。
だが、その救出が引き金となり、彼は悪意の渦へと巻き込まれてゆく。
逃げることも、怯え、身を隠し続けることもできない。いずれは戦うしかない――守るべきもののために。
剣舞、神話、昔話、剣豪譚が交錯し、やがて訪れる仔猫との切ない別れ。雷鳴が魂を震わせるような、運命と再生の物語。