古代の中国では、この全宇宙を仙人の住む「仙」、地上の人々の住む「人」、死人の住む「鬼」(地獄)の三つに分けて考えられていたが、これらの世界の全体を統括していたのは「仙」の世界の最高位にあり、全世界を支配する「天帝」であった。
さて、この「天帝」は地上の世界を創造するにあたって、人々の自由で自主的な活動を認め、その統治については地上の皇帝に委ねる事とした。しかし、常に天上からの監視を怠らず、一度、政治的な混乱や道徳的な荒廃が生じた時には、その無秩序を救済するため様々な使徒を使ってその混乱を正したという。
この使徒の一つが、「星神」である。この「星神」は、水面下で統治者である皇帝を助けて目的を達し、本懐を遂げたあかつきには再び天に戻ると信じられていた。
平安時代の末期は末法の世といわれ、混乱がうち続き、盗賊が横行した。また、貴族・武士たちの果てしない権力闘争によって人々の日々の暮らしは困窮の極みにあった。
当初、天帝は、こうした混乱の終焉を期待し、この国の統治を平清盛という人物に政治を託した。しかし、清盛は、実権を掌握すると奢るようになり、この混乱を収めることはできなかった。思い悩んだ天帝は、東国の一人の人物に焦点を当てた。それが、源頼朝である。頼朝は、流人という境遇から身を起こし、瞬く間に鎌倉に軍事政権を確立し、やがて、朝廷の軍事的司令官である征夷大将軍となって鎌倉に幕府を開いた。
この頼朝政権の樹立を陰で支えたのが、下総国千葉庄の領主、千葉介常胤であった。しかし、頼朝が極めて傑出した人物であったが故に常胤の功績はこれまで、その影に隠れて顧みられる事が無かった。しかし、常胤の一生を振り返ってみると、それは、あたかも天から与えられた使命を全うした「星神」であったと言っても過言ではない。
この物語は、わが国最初の武家政権であった鎌倉幕府誕生の影の功労者である千葉介常胤から見た鎌倉幕府創設の歴史と常胤の稀有な生涯を浮き彫りにするために書かれたものである。
なお、この小説は基本的には歴史的史料を考察して、それを物語として構成したものであるが、史料にはない事柄や登場人物などについては筆者の創作によるものである事を予めご了解をいただきたい。
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輝神・千葉介常胤: ~一介の流人、頼朝を将軍にした男~
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