六世紀以上の時を隔てた建徳年間、北に阿讃山脈を仰ぐ四国は阿波の国のとある寒村に、一昔前まではそれなりに名を馳せていた名家が巍々粛然と流れ着いた。
その一家の嗣子である雪一だが、彼の右脳と左脳はどうにも仲が悪いらしく、あらゆる物事に対してことごとく突飛で独りよがりの解釈をする性質を帯びている。
雪一は幼少期より苦しむ民の救済を己の使命として学に励んできたが、流れ着いたのは、平和を取り戻すまでもなく既に平和な村。雪一の人格は、忽ち袋小路に陥った、かに思われた。
ところがそんな現実も流暢に脚色してしまい、雪一は村人が苦しんでいると思い込みあれこれ余計な手出しをする始末。村人にとっては迷惑千万だが、これも何かの縁だと諦めて渋々雪一の迷走を許す。
そんな折に、村は古今未曾有の飢饉と地震に見舞われることになるが……。
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阿波の叫神
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